『アナ骨(アナトミック骨盤ヨガ)も、解剖学の学びも、ヨガの先生も、もう全部やめよう』
やけになったあの時がある
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2021年、32歳のワタシ。
「アナ骨のオンラインのイベントに出演してみない?」
内田先生からもらった話。
小さな町で細々とヨガを伝える、平凡なインストラクターに、突如訪れたチャンス。
噴き出る汗、高鳴り早鐘を打つ鼓動。断る選択肢は無かった。
当日。zoomで4画面にもわたる、90名程の方が参加してくれた。この経験は新人イントラにとって飛級に近いギフトだ。
必死にアナ骨の想いを届け、あっという間の40分。それはほんの一瞬のようでもあり、
いよいよシャバーサナ開けの終わりの合図。それと共に手の震えが止まらなくなったのも、笑い話しとしては良い思い出。
そしてその後、小さかったはずのワタシの世界が一変する。
嬉しい事に全国各地にワタシを知ってくれる人が増えていった。
同時に、憧れ、嫉妬、羨望、期待、さまざまな眼差しがワタシの心をよぎるように交差し、
少しずつ、ワタシの心はがんじがらめになっていった。
先輩にも、後輩にも負けないようにと、夢中になって勉強し、アーサナ力を上げる為に練習し、
『ワタシはここにいるよ!』とSNS発信を続ける日々。
気がつくと、1人ではたどり着けないような高みへと導かれていた。
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突然の変化にプレッシャーという荷物を背負いながら、 ゴールが見えない登山をするようで、
かかり過ぎた心の負荷に身体が少しずつ悲鳴をあげ始める。
2022年8月、真夏の日差しが差し込む頃、左耳に起こる耳鳴りが最初の違和感。
機械音のようなノイズはあげてもいないのにボリュームが増すばかり。
喉に何かが詰まったような息苦しさは、呼吸を乱す度、不安という恐怖まで連れてくる。
食欲も減り、「食べているか?」と心配する母に、ダイエットをしてると誤魔化すも、
鏡で見ると不健康に浮かびあがった肋骨があり、自分が可哀想になった。
年不相応な白髪まで増え、ドライヤーを終えた足元には、換毛期の動物のように抜毛が束になって落ちる。
頭痛薬を飲んでも消えてくれない偏頭痛。
苦しさを旦那に相談出来ず、作り笑顔を振る舞い続ける食事の時間。
落ち着くのは深夜、リビングでようやく 1 人の時間。テレビが消えた真っ黒の液晶をぼんやりと眺める夜。
今思うと不気味でしかないが、何かに、随分追い詰められていたのがわかる。
人通りの少ない道を好み、誰かとすれ違うことを避けて歩き、
『車に引かれたら楽なのに』と願って横断歩道を渡る瞬間さえあった。
「迷惑をかけずに消える方法」など、愚かな事とは思いつつ検索してしまうワタシ。
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当然、学びの時間も、思うように集中出来ず、焦りは混乱を連れてくる。
内田先生の講座アシスタントを許され、
ヨガ解剖学アカデミーというサイトで毎週、連載を持たせて貰い、先生から褒められる度、
嬉しい反面、恐怖も増えていった。
期待に応えられなくなったらどうしよう、、、
アシスタントで講座に参加をする度、「なんであなたが?」という視線を参加者から浴びせられ、
実力を試されるかのような質問は毎度の事、それらに慣れたつもりだったのに、
思い返せば、随分と痩せ我慢をして耐えていたのだと思う。
横をみると、次々と台頭する仲間たち。
アーサナ力に長けた人、解剖学に長けた先人、魅力的なインスタライブを盛り上げる仲間も然り、
私が今いる場所が、油断したら簡単に取って変わられてしまうという恐怖。
いつの間にか、身の丈以上のハードルを勝手に掲げて、自爆寸前の私がいた。
「おまえの力では及ばない」と
身体からの声は、ワタシをあざ笑っているようにさえ思えた。
足をすくわれた訳でなく、肩をたたかれた訳でなく、臆病になり、
登ったはずの山から堕ちてしまった。心も身体も完全に狂い始めた。
『アナ骨(アナトミック骨盤ヨガ)も、解剖学の学びも、ヨガの先生も、もう全部やめよう』
こんな不調は2022年8月から翌2023年の春先、5月位まで一年弱続いた。
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それでも、結局アナ骨が好きで、解剖学が好きで、この仕事をやめられずにいたワタシ。
その夏あたりから、少しずつ、心と身体が落ち着きを取り戻してきた。
不思議な事に、やめようと思っていたアナ骨の時間が、ワタシに勇気をくれた。
アーサナのキープに耐えきれずに崩れ落ち、 震える脚、乱れる呼吸。
その中で聞こえてくる内田先生とのりこ先生の、 「戻っておいで」という声。
その声を頼りに、力を振り絞り、ポーズに戻ると聞こえてくる、
「戻ってきてくれてありがとう」という声。
それはアーサナに戻る事でなく、ワタシらしい人生に戻っておいでと、
囁かれているようだった。
崩れても、戻ってくることを許され、ワタシを受け止めてくれる。そんな時間。
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『夢』という言葉に力を借りるのならば、あれから掲げた夢が2つ。
それは、キチンと生きてワタシをもっともっと大切にする事。
もう一つは、
あの時の痛みがあるからこそ、成り立つワタシのクラス。
ワタシを必要としてくれる方へ、このヨガを届けたいという夢。
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初めてオンラインイベントに立った日から4年。
2025年7月6日。 32歳から36歳になったワタシ。
アナ骨の時間は、人生の波と同じ。堕ちていっても、又、戻れる場所がある
綺麗に、上手に生きれなくとも、不格好でも、逃げてもいい。 俯いたままでも構わない
少しでよいから、ポーズに戻ってこれる、そんなアナタの底力を見つけてあげて下さい。
何処に行きたい
いつか見た夢を温めて
心の奥に眠らせた、いつかの夢、
たとえ、それが破れていても、その道を歩いたからこそ、今のワタシがいるんだ。
(加筆修正 内田かつのり)
さいとう なつみ
秋田県出身 宮城県大崎市在住
ヨガインストラクター歴8年
アナトミック骨盤ヨガ指導者養成講座修了
アナトミック骨盤ヨガアドバンスコース修了
ヘッドショルダーセラピスト養成コース修了
シニアヨガ指導者養成講座修了
怪我・疾患総合講座修了
ヨガ解剖学データベース40
ヨガ解剖学セラピー
実践ヨガ解剖学講座基礎篇
ヨガ解剖学マスターコース修了
ヨガトレーナプロコース修了
旧・アナトミック骨盤ヨガ指導者養成講座修了
その他