死と言うものを、否応なく突きつけられたあの日。
2022年3月。春を待つ気配が町に溢れているのに、当時の私は癌検査の結果待ちで、
生きた心地が全くしない、そんな日が続いていた。
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休みになると、片道 1 時間 40 分かけダンススタジオに車で向かう。
途中、ドライブスルー・セガフレードでソイラテ買うのが私のルーティン。
因みに砂糖は抜いている。本当はコーヒーが苦手だが、休日にコーヒーを飲んでる私がカッコいいと思ってる。そんな私だ。
スマホを通したオーディオから流れる音楽、リーキー・ジーに合わせ、大好きなFollow your Heartを大声で歌う。
~与えられたミッション 巡る巡る世界で~。
目の前には、沖縄独特のエメラルドグリーンが果てしなく広がる。黒潮が流れ込む沖縄独特の碧色は、休日に最高のご褒美。
ドライブを兼ねダンスの練習に向かう時間は永遠にも思えたし、なくなる事さえ想像もしなかった。
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検査結果を待つ間、「生きたい」 と心から願ったものだが、残念ながら悪夢は正夢になってしまう。
車から見える美しくも永遠に続くような世界は、すっかり変わってしまった。
いや違う!景色は何も変わっていない。私の心が色褪せただけ。
彩りを失い、温もりという体温さえ無くしてしまった。大好きなドライブの時間も、ただ冷たく重い時間に包まれた。
車の窓越しに映る、見知らぬ人たちが堪らなく羨ましかった。春なんて訪れはしない、2022年3月。
「あの人はまだ生きられるんだ」
「あの人はきっと健康なんだ」
「あの人は私より幸せなんだろうな」
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果たして人は、私という人間がこの世からいなくなる。そんな恐さを、考えたり、感じたりする事はあるのだろうか?
唐突に突きつけられたはずの『死』というカウントダウンであったのに、不思議なもので、ガン宣告を受けた時の私は案外、穏やかだった。
度重なる検査で数週間が過ぎ、それは人生のほんのひと欠片の時間でしかないが、私に覚悟を与えたくれた貴重な時。
ガンを受け入れる心構えをする時間でもあったのかもしれない。
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真正面から病気と向き合う為、治療を優先し、人生の選択をした。
そんな中、失ったものは数えきれない。
宣告から 2 ヶ月後、開催予定であった アナ骨(アナトミック骨盤ヨガ)の養成講座をやむ無くキャンセル。
当時勤めていた会社を辞め、光に満ちた新しい人生のスタートを切るはずだったのに、、、
悔しくて悔しくてたまらなかった。
ガンと向き合う覚悟は出来ていたものの、やっぱり悔しい気持ちは拭えない。
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だけど、、、身体は前へ向くように、前に進むように創られている。
私は後向きには歩かない。
あの時の悔しさ、虚しさ、それは私の心を間違えなく強くしてくれたはず。
早く元の自分に戻りたくて、、本当の自分に戻りたくて
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手術後、渡されたリハビリのテキストは、丸暗記するほど身体に染み込ませていった。
やってはいけない、駄目だとわかっていたのにヨガの練習もした。
これ以上何かを失う事が怖かったから、じっとしていられなかった。
無事退院して3 ヶ月、痛々しい傷跡が心にも身体にも残っている。
前回キャンセルしたヨガの学び、アナ骨養成講座に挑んだ。
そして、今、なんとか、少しだけ元気が戻って来た。
そうだ、
これさえあれば何も怖くない
これさえあれば他に欲しいものなんて何もない
ガンサバイバーは 、何年も何年も再発の恐怖に怯え、震え、
孤独な時間と向き合って生きていく。勿論、私もその 1 人。
碧色の海は、今日も変わらずそこにある。あの日、彩りを失った海。
だけどやっぱり私はここが好き。
「生きたいと」 願ったあの日から 『今、まだ、確かに生きている』
何処に行きたい
いつか見た夢を温めて
あの頃、私は悪い夢を見過ぎた
それでも私は、人生に絶望なんてしていない
私の手でそれを払いのけ、
休日には、最高ドライブを楽しんでいるんだ。
~全ては望んだSTORY 明日へ明日へ~
(加筆修正 内田かつのり)
三木 あゆみ
神奈川県出身 沖縄県在住
ヨガインストラクター歴13年
【受講歴】
アナトミック骨盤ヨガ指導者養成講座修了
アナトミック骨盤ヨガアドバンスコース修了
ヨガ解剖学マスターコース修了
ヨガトレーナープロコース修了
旧アナトミック骨盤ヨガ指導者養成講座修了